愛車生活:エンジンスタートにキーをひねる。その尊さを語りたい。

僕は自分の性格が未だにわかっていません。仕事柄新しいものをしっかり取り入れていきたいという気持ちがありながら、伝統を重んじるというか無駄なものがすきというか、保守的なんです。

ただ合理主義者であることは明らかなので「仕事以外の趣味であれば」という明確な条件で、反動として非合理性を求めます。これはもう性癖だと思うぐらい、手間がかかるけど美しいものを好き好んだりします。

■クルマのキーは一番手に触れるアイテムかもしれない。

キーってクルマと自分とをつなぐ重要なアイテムだと思うんです。僕は納車時に”キーを受け取り、エンジンをかける瞬間”に自分とクルマが繋がった気がするんです。なのでキーは非常に重要なアイテムですし、ずっしりと手に重みを感じます。

さらに言うと”キーをひねる”エンジンスタートを重要視しており、自分の手がダイレクトにエンジンを始動している感じがたまらないですね。なので物理的な鍵でなくなった今でも「キーを差し込んでひねる」という行為を残しているポルシェには大きな敬意を抱いています。

僕は今でも初めて買ったクルマ、むちゃくちゃな貯金ペースとリスクを抱えて購入したぽすけ(ケイマンS)のキーをひねる瞬間を忘れられません。

そして納車の時、うわの空で各種書類の説明を聞いた後、自分で受け取ったキーでエンジンをかける瞬間、無意識にめちゃめちゃニヤついているわけです。素直に笑おうとしたわけではないのに口角だけ上がってしまう、アレです。

■そういえば納車時にキーをひねったクルマはポルシェだけだ。

こうしてブログを書きながら思い返すと、僕は納車時に運転したのが2/4台だと気づきました。今もあるクルマを含めて僕が今まで乗ったのは

  • ぽすけ(ケイマンS)→売却済
  • つゆだく(ローバーミニスポーツパック)
  • めぇさん(パナメーラS)
  • じょんじょん(ミニ3doorジョンクーパーワークス)

なのですが、そのうち納車時にキーをひねっているのはポルシェ2台。(我ながら買っているクルマのブランドが偏っているとは思うが、選定は広く行って購入している)


思い返すとつゆだく(ローバーミニ)のキーをひねったのは当時彼女だった現在の嫁で、じょんじょん(ミニJCW)も嫁。ローバーミニは嫁を焚き付けて購入したので納車時に「最初に乗ってもらう」ことが重要と考えた結果です。

今でも動画が残っていますが、キーをひねってクラシックミニのやかましいエンジンがかかった瞬間の、最高にワクワクした顔を鮮明に覚えています。動画に写っていないですがたぶん僕もまったく同じ顔をしていたんだと思います。

はじめてクルマを、しかも夢のようなクルマを手にした自分がキーをひねって、手が震える興奮を覚えたあの瞬間は忘れられません。

■キーをひねるクルマは減ってきている。気がつけば絶滅危惧種だ。

物理的に1本ずつ違う溝が掘られたキーは、”ひねることによって”鍵として合っているかを確認します。そしてエンジンがかかります。

それが電子ロックになった瞬間から、もうひねる必要なんてなくなったわけです。電子信号でドアの鍵が開いた時からクルマは持ち主を正しく認識したも同然で、エンジンキーを再度確認する必要は無くなりました。それがボタン式エンジンスタートです。

現在はとっくにポルシェのキーには金属製の”鍵部分”がありません。ぽすけ(ケイマンS)は2006年モデルだったのでドアの鍵を開けるにはボタンでリモートロック、エンジンをかける際にはキーを差し込んでひねる形でした。キーをシリンダーに差し込んだ瞬間、おもむろにガシャっという音を立ててステアリングロックが解除されるのをよく覚えています。

今では流線型、そしてコークボトルのボディラインを摸したキーが使用されており、物理的な金属棒は出ていません。キーではボタンのみで操作を行います。それでもエンジンをかける時は、電子キーをブスッと刺してひねるんです。ボタンのように時間を空けずにスターターが回り、かかった瞬間にデカイエンジン音で吹け上がる。最高です。

■率直に言えばJCWのエンジン始動は希薄だ。

今のご時世、エンジンスタートはプッシュボタンはあたりまえ。うちのクルマではじょんじょん(ミニJCW)がこれにあたります。

納車の際にはめぇさん(パナメーラS)でディーラーまで取りに行き、嫁がじょんじょん(ミニJCW)に乗って帰ってきました。なので納車時のエンジンスタートは嫁であり、その瞬間を僕は見ていません。もったいないことに、僕は納車のワクワクする儀式を逃したのです。

そしてその後僕がエンジンをスタートさせる時があるわけですが、プッシュボタンには正直心を揺さぶられませんでした。エンジンがかかればJCW、かなり良い音で目覚めますし、クルマとしては非常に気に入っています。

でもエンジンスタートは自分と遠い世界で行われるんです。プッシュボタンとキーをひねる、ここには僕にとって大きな谷があります。それこそ

「クラシックミニのダイレクトなゴーカートフィーリング」

「メルセデスSクラスの、どんな運転をしても寝ている人を起こさない隔離された個室空間」

ぐらいに差があります。これでJCWの魅力がスポイルされるわけではないですが、僕にとってはグランツーリスモのようなレースゲームのスイッチを入れるのと実車、それぐらいの遠さがあります。

だからなんだ、と思う人が大多数と思います。でもそんな皆さんが愛車とつながる瞬間はどこでしょうか。僕はキーをひねって、エンジンスターターが回り、今日の愛車の機嫌はどうだろうと耳をすませながらエンジンが起きる瞬間、たまりませんね。