テスタロッサ:スパークプラグの状態をチェックしてみる。~③コンディションの悪い左バンクとプラグギャップ調整編~

前回に引き続き、テスたろー(うちのフェラーリテスタロッサ)のスパークプラグを外して状態確認をしていきます。併せてプラグの電極の隙間であるプラグギャップを規定値に調整していきます。

前回までの記事はこちら。

テスタロッサ:スパークプラグの状態をチェックしてみる。~②右バンクのスパークプラグを見ていく編~
さて前回1本だけ試しにプラグコンディションをチェックしてみましたが、今回は残りの11本を含めて一通りのプラグの焼け具合からコンデ...つづく

旧車では当たり前だった?エンジンごとに規定のプラグギャップが設定されていて、プラグにも調整が必要だった。

前回の右バンクからやっていたことなのですが、プラグコンディションをチェックしつつ同時にプラグギャップも規定値に調整をしていました。

「プラグギャップってなに・・・?」

という人も多いと思うのですが、僕もそうでした。たぶん旧車が現役世代からクルマをいじってた人はあたりまえなのかもしれないですが、スパークプラグも指定製品を購入してポン付けするのではなく、クルマごとに定められた値にプラグギャップを調整する必要があります。

プラグギャップというのはスパークプラグの先端、電極の火花が散る部分の隙間のことです。ここを0.1mmレベルで調整していくことで、エンジンごとに設計された適正値にするわけです。

フェラーリテスタロッサのユーザーマニュアル

ちなみにテスタロッサのように昔の車は、プラグギャップを調整することが前提なのでクルマについてくるユーザーマニュアル内でタイヤの空気圧と同じようにプラグギャップ設定値が載っています。古いクルマだとユーザーマニュアルなど書類がついてこない(フェラーリの場合は書類や付属工具だけ抜かれて別で売られてしまう)ことも多いのですが、テスたろーは一通りの書類がついてきていて、なんと新車でこのクルマを購入した人の名前までわかります。笑

最新のクルマと違って取説の厚さは1/4ぐらい?と思うほど薄く、34年前のフェラーリはいかに機能がシンプルかがわかりますね。その割にはオーナー自身である程度のメンテナンスをすることが前提になっているので、それなりにメンテナンス方法の記載があることが面白いところ。最近の車はむしろディーラー以外で勝手に触らせないためメンテナンス系の記載は最低限、あっても緊急時以外触るなという記載があったりもしますよね。

フェラーリテスタロッサのプラグギャップ

さてプラグギャップに関する記載。この絵を見てもらえれば一目瞭然ですが、プラグギャップとは先端の電極部分Aのことです。これが規定値だと0.6mm~0.7mmということ。0.1mm以下の調整なのでかなり微細な作業だということがわかります。ちなみに指定スパークプラグも丁寧に書いてあります。NGKのこれは少なくとも既に古い品番になっているので、今はDR8EIXが対象品番です。

元のNGK標準ギャップから0.1mmずつ狭める調整をする。ゲージは0.05mm目盛の微細な世界だがざっくりしてそうなMade in USAしか手に入らなかった。。

ということでプラグギャップの調整に移ります。まずはプラグギャップを測るためにそれ専用の測定ゲージを用意する必要があります。僕はこういった精度を求められるツールについては日本メーカー製を使うようにしているのですが、スパークプラグギャップゲージはパッと日本製が見つからなかったのでやむを得ずアメリカンなやつを選択。

フェラーリテスタロッサのプラグギャップ調整

これは中華製があったり、なんかやたら高価なものがあったりするので購入品はよく見て選んだ方がいいですね。ちなみにアメリカ製なのでインチ表示で一瞬ビビってしまうのですが、裏返すとミリメーター表示なので安心です。

このゲージは外周一周の厚みがそのメモリに沿って変化しており、ゲージ部分にプラグの隙間を差し込むことでその幅を測るというものです。

フェラーリテスタロッサのプラグギャップ調整

ひとまず現在のプラグギャップを測ります。値はどのプラグも一律0.75mmということで、さすがNGKはムラなく精緻な製造をしていることがわかりました。あたりまえか。でも僅かとはいえテスタロッサの規定値の範囲外ではありますね。

フェラーリテスタロッサのプラグギャップ調整

これを0.60mm~0.65mmに調整していきます。どうやって調整するかというと、コンクリなど硬いところにプラグ陰極(つまり電極先端)を当てて優しくハンマーでプラグを叩いて隙間を狭めます。そこで気をつけるべきはゲージをつけたままハンマーで叩かないように注意してください。ゲージの素材もあまり固そうではないので歪んで狂ってしまいそうですし、プラグ電極も一発で痛みそうです。

なので面倒でもちょっと叩いたら測り、またちょっと叩くを繰り返します。強く叩くと容易に曲がるので細心の注意が必要です。それとゲージも引っかかり方で測定値に誤差も出るので、ゲージの薄いところからプラグを差し込んで厚い方に回して止まったところを測定値とする、それを3回ぐらいやって実際の値を決めます。

フェラーリテスタロッサのプラグギャップ調整

コツコツとどのプラグも規定値の範囲内に。しかしプラグも天下のNGK様なわけですし、30年以上前の当時よりも同じ電圧で点火性能が上がっているはず。要は高い圧縮気圧の中で必要な力で点火ができればいいわけなので、プラグの点火性能が上がったならプラグギャップが広くとも問題がないのかもしれません。

むしろプラグギャップは狭いほど着火力はありますが、火種の大きさは小さくなります。そういうバランス関係なので、しっかり着火するなら火種が大きい方が良く、プラグギャップは大きくても良かったのかもしれないです・・・。まぁなんにせよ、いったん調整はして様子を見るということで。

フェラーリテスタロッサのプラグギャップ調整

ちなみにプラグギャップが狭くなりすぎた時はゲージの穴を使ってテコの原理でギャップを広げられます。広げられるんですけど、これもちょっとした力で一気に広がってしまうので少しずつ調整していくことが必要です。

左バンクのプラグコンディションはあんまり良くなかった・・・。カーボンも堆積気味だけど、オイル付着が心配なポイント。

左バンクのスパークプラグコンディションを見ていきます。残念ですが、結論から言うと左のプラグコンディションは良くなくて、カーボンが堆積しているプラグが結構あるのと、さらに悪いことにややオイルで湿っているプラグもありますね・・・

カーボン堆積をするのはやはり燃調が悪いとか、点火が悪いとかいくつかの理由が考えられますが、きれいにガソリンが燃え切らないことで炭素が残るというのが原因です。ひとまず原因を特定する必要がありますが、まずは単純にエンジンのちょいがけばかりが原因の可能性もあるので、ある程度走行してみて再度コンディションチェックをしてみようと思います。

とりあえず納車状態のコンディションを記録。

■左バンク7番プラグ

碍子が黒いので燃え方がイマイチですね。それに加えて光沢があります。触ってみると指に湿った黒い液体汚れがつくのでオイルかガソリン、そして嗅いでみるとガソリンではなさそうなのでオイルです。オイルが燃焼室に漏れ入ってしまっているから燃焼がイマイチでカーボン堆積しているという因果関係なのかもしれません。

フェラーリテスタロッサのスパークプラグ7番

■左バンク8番プラグ

こちらは碍子が白く結構マシなコンディション。ややカーボン付着気味かなとも思います。

フェラーリテスタロッサのスパークプラグ8番

■左バンク9番プラグ

これも碍子はなんとか白さを保っていますが、カーボンが堆積して、かつオイルでややウェット。拭けばきれいになりますが根本解決にはならないので様子見ですね。

フェラーリテスタロッサのスパークプラグ9番

■左バンク10番プラグ

これは結構悪いです。カーボンがガッツリ堆積しているのと、やはりややオイルで湿っている感じもします。

フェラーリテスタロッサのスパークプラグ10番

■左バンク11番プラグ

これも同様にダメ。

フェラーリテスタロッサのスパークプラグ11番

■左バンク12番プラグ

最後の1本、12番はちゃんとガソリンが燃えているようですね。

フェラーリテスタロッサのスパークプラグ12番

ということでようやく一通りのプラグコンディションを確認しました。

なんとなく思ってたけどやはり34歳のエンジンは全く問題なしとはいかない。貯金だ、貯金が必要だ。

右バンクの1番〜6番のプラグは問題ないのですが、左バンクは6本中4本がカーボン堆積を含めて良くない状態です。さらに問題なのがオイルで湿っていることからもオイル上がりもしくはオイル下がりによって燃焼室にオイルが侵入しているっぽいこと。おそらくバルブ側からオイルが漏れるオイル下がりかと予想しています。

オイルがエンジン停止中にジワジワと溜まっていると、エンジンをかけた時にそのオイルが燃えてマフラーから白煙を吹きます。もっと悪いとそもそもエンジンのかかりが悪くなります。プラグがオイルで湿ると点火しづらくなるみたいで、エンジンがかからないことの原因になったり、かかってもアイドリングが安定しないなどが発生します。

フェラーリテスタロッサ

今回気持ち程度にプラグギャップの調整をしましたが、まぁ最新のスパークプラグにおいて目に見えてわかる改善にはならないでしょうね。根本解決はオーバーホールしかなく、バルブ側からのオイル漏れならヘッドオーバーホール、ピストン側からのオイル漏れならフルオーバーホールですね・・・。しかし今のところテスたろー(うちのテスタロッサ)はなんかヤバそうな体調ではなく、ひとまず長距離をしっかりとエンジンを回して走りながら様子を見てみたいと思います。もちろんいつかはベルト交換も含めてエンジンを下ろすことにはなるので、いずれにせよ並行して貯金は必要です。笑